ボールとスリップの意外な関係 その1 仕組みを理解しよう

ボールとスリップの意外な関係

 パイロットの皆様にとってはおなじみのこの計器ですが、実は深~い話があるのです。
ボールとスリップの関係を理解する為には多くのハードルがあります。
ビギナーはもちろんですが、実はベテランパイロットでさえ誤解しやすい、深い落とし穴もあります。
一つ一つ確認していきましょう。
最後まで読み進めると飛行機のスリップについて完璧に理解することが出来ることでしょう。

B767のSlip Indicator(通称ボール)

 最初にこの計器の仕組みについて紹介します。
見ての通り、黒い丸い玉が曲がったチューブに入っているだけの仕組みです。
DIYが得意な方ならご存じの通り、水準器と同じようなシンプルな原理を利用しています。
水準器の仕組みと目的を一般的な解説で行いますと、重力を活用して水平線を導くものと言えます。気泡が中央に位置していれば水平です。
但し、水準器が静止していることが前提条件です。例えば水準器の端を手で持って、グルグル振り回すと、例えそれが水平であっても遠心力が働くため、気泡は中央から外れます。

さて、ボールには黒い線が刻まれています。
この意味を紹介しましょう。
皆さんが飛行機に乗って、飛行機が空中で静止していると仮定します。(ありえないのですが)

バンク角をゼロにするとボールの中心は中央にあります。


徐々に機体を右に傾けていき、
ボールの中心が右側の黒い線と一致した位置に来たとき、バンク角は右2度です。



ボールの左端が右側の黒い線と一致した位置に来たとき、バンク角は右4度です。

 いかがでしたか?
ボールに刻まれている謎の黒い線の本質的な意味を紹介しましたが、実は操縦しながらボールを見て、「バンク2度分ずれている」などの表現は使いません。
「ボール半分右に飛んでいる」等の表現をします。
2度も4度も運用上はあまり意味の無い数字なのですが、旋回中のボールのずれ(内滑り、外滑り)を理解するときにこの数字が活躍します。

ここまでは飛行機が空中に静止していると無理矢理仮定して、ボールの指示とバンク角の関係を理解しました。


 ここでどうして僅か4°の傾きがボールの動きとなって現れるかをおさらいしてみます。
ボールが入っているチューブは曲がっており、この曲率が傾きをうまく表示する仕組みになっています。
また図のようにボールを右に動かしている力は、静止していると仮定した場合は重力だけで、特に不思議な力は働いているわけではありません。実にシンプルな仕組みです。

 さて、今回は静止していますが、飛行機が動いているときは話が複雑になってきます。なぜならば重力以外にも例えば遠心力などが働くからです。
しかし、そのような場合でも平易な表現をすると以下のように言えます。
ボールは飛行機に横方向の力が働くと左右にずれ、その力の量によってズレの量が変わる。



その1ではボールについて、飛行機が空中に静止していると仮定して、その指示の意味について解説してきました。
次回は空中を水平直進飛行しているときにボールがずれている状態を考えてみましょう。(賢明な読者はすぐ気がつかれたと思いますが、スリップさせて飛行すると上記の状態になります)

乞うご期待。

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