ボールとスリップの意外な関係 その6 危険な外滑り

「ボールとスリップの意外な関係」についの紹介は多発機まで進んでしまいましたが、一つ立ち戻ってどの飛行機にも共通する話題を最新のVRを活用して紹介しましょう。
参考にさせて頂いたサイトは下記です。

https://www.boldmethod.com/learn-to-fly/aerodynamics/slip-skid-stall/

Skid(外滑り)がSlip(内滑り)に比較して危険であり、低高度のベースターン~ファイナルターン中にSkidを伴った失速が起こると極めて危険な状況に陥る事を紹介しています。
筆者もこのサイトを読んで、30年ほど前に学んだことを思い出しました。
 綺麗なイラストで紹介されていますが、英語で書かれていて文字が多いためなかなか理解出来ないと思います。
そこで、VRの助けを借りて理解を促進するイラストを作ってみました。
なお、素材が揃っているため、わずか30分ほどでイラスト作成が完了しました。
なお、飛行機のモデルの位置やこのサイトから想像したもので正確にシミュレーションしたものではありません。

VRで作った簡単なイラストは下記です。
奥にスピンのコーナーがあって重なってしまっていますが、ご容赦ください。
薄い青の円錐を切ったような面はSkechupというソフトを使って25°の傾きで作りました。
飛行機が反時計回りに旋回していますが、内滑り(Inward Spin)と外滑り(Skid)から失速を起こした場合の挙動をジェット旅客機のモデルを使って一緒に示しています。

コーナーの全景 (後ろはスピンの説明)

最初は危険な外滑り(Skid)からの失速です。
旋回内側の翼が失速してイラストのモデルのように運動します。
どうして内側の翼が失速するのかについては今回は省略しますので、英文サイトを参照して下さい。


英文を参考にして解説します。
失速に陥る前にスキッドの状態になると、バンクが深まる傾向になります。
これを修正するために(元々のバンクを維持しようとするために)反対側のエルロンを操作します。(多くの場合無意識のうちに)

また、抵抗が増えるためにノーズが下がり、降下率が増えるために、エレベーターで修正しようとします。
左旋回の例では、ラダー左、エルロン右、エレベーターアップの操舵です。
(パイロットであればわかると思いますが、この操作は意図的にスピン訓練の時のエントリー操作、そのものですね。)
突然、機体は失速し、左スピンが始まります。例えば高度700フィートから地面に激突するまでに360度回転する結果に陥ります。


一方、内滑りでの失速は傾向は同じですが、穏やかのようです。

以下、Google翻訳を少し修正したものです。

スリップ中に、反対のシナリオが発生します。機体の機首は旋回の外側に向かって振れ、旋回速度に対してバンクが大きい状態です。外側の翼は迎え角が大きく、バンク角を維持するためにその翼のエルロンを下げている可能性があります。
外側の翼は迎え角が大きく、最初に失速し、航空機は落下しながら水平になる方向にロールします。

わかりにくくなってしまいますので、高度はあまり変動しない配置をしています

話をまとめますと、旋回中はラダーの踏みすぎ(発動機が正常な場合)はこのようにおそろしい結果を招くので、どちらかというと踏み足りない方がベターという結論になります。

さて、ここからが重要です。
ベースからファイナルへの旋回中、オーバーシュートに陥った場合、ラダーで修正すべきではない。(ラダーを深く踏んで滑走路中心に戻ろうとすべきではない)
ラダーで修正しようとするとSkidを起こし、速度のロスが重なるとスピンに陥ります。

この重要な注意点は英文サイトでもしっかりと述べられています。
オーバーシュートはよくあることですが、修正は調和が取れた旋回(Coordinated Turn)のバンク角を深めて行います。バンク角は旅客機の運航では通常30度を最大に考えます。
つまり30度バンクでも修正しきれないほどのオーバーシュートは潔く諦めてゴーアラウンドを行い、再度着陸を行うべきなのです。
この修正しきれないほどのオーバーシュートの状態から少しでもセンターラインに戻ろうと考えて、過度のラダーを踏んでしまうとSkidがおきます。
そもそもラダーを踏んでも、機軸が滑走路を向くだけで期待するほど状況は改善しません。この点はあまり理解されていないようですので、解説しましょう。

30度Bankで左旋回してもなかなか滑走路中心線延長上に会合できない時、左ラダーを踏み増したとしましょう。
機首は左を向き、横滑りのために抵抗が増えるので降下率が増えます。つまり低くなります。
それを解消するために(パスを維持する為に)エレベーターを引きますが、これによって翼全体の迎え角が増大します。
また、機首が左を向くスリップのために左バンクが深まります。
30度バンクの目安を守ろうとするため、右エルロンを切ります。
これによって30度バンクが維持出来ますが旋回半径は、確かにやや小さくなります。
(この点の説明は省略しますが、これまでの「ボールとスリップの意外な関係」を完璧に理解されている方は納得いただけると思います。)
これによってオーバーシュートの状況が若干改善されますが、おそらく期待する程のメリットは無いでしょう。
機首が滑走路方向を向くので心理的にはホッとしますが、スピンの領域に近づくというおそろしいデメリットが発生するのです。


次にとても分かり易いyoutube動画を下記に紹介します。



最後にこのオーバーシュートからラダーを踏み増してもそれほどメリットは無いことを示す解説をVRで作ってみました。
飛行機のモデルが途中から2つに重なりつつ分かれていますが、左に頭を振っているのがSkidを起こしている状態です。

滑走路のモデルは小さく見えるのですが、作成するのに手こずり、2日かかりました。
日本の3000m滑走路のマーキングを忠実に再現していますので今後このサイトでの解説に活躍すること間違い無しです。

考えてみますと、このイラストの飛行機の最後の状態からは右旋回でファイナルにアラインしなければなりません。
Skid(外滑り)状態から大きい右エルロンを切るわけですから、左ラダーをすみやかに戻さないと危険な状況に陥ります。


今回紹介したVRモデルはSpatialという無料サイトで作成しました。
Spatialの紹介記事はこちら
来月以降、有料の契約を結んでから皆さんをこのサイトにご案内します。
無料プランでは招かれたビジターが3Dモデルを動かす事が出来てしまうのがその理由です。
URLのリンクをクリックすると、Spatialへの登録を求められますがそれが済むとバーチャルギャラリーに入室することが出来ます。
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バーチャル空間を自由に動き回ることが出来るので理解が促進されます。
この点は改めて紹介いたしましょう。