サークリングを風の見地から解明する 

Flight Plannnerの活用

サークリングはパイロットにとって最も難しい操縦であると言えましょう。
その研究には今まで多くの方が挑んでいたと思いますが、かねてから一つの盲点があったと感じています。それは風の影響です。

下のイラストは福島空港に幅1nm、TAS(真対気速度)100ktでダウンウインドで進入してアビームから15秒間直線飛行してから一定のバンク角(16度)で旋回している様子をFlight Plannnerで描いたものです。
実際は0.8nmなどの幅であったり、速度が異なりますが、ここでは単純化して説明をしています。

わかりにくい方もいらっしゃるともいますので、飛行機のイラストを加えてみました。

こういう説明は今までの一般的なものですが、ここからが本題です。
上図は無風の状況を表していますが、着陸する滑走路に対して正面から15ktの風が吹いていたらどのようになるのでしょうか。

少しわかりにくいと思いますので下記に拡大して着目点をオレンジで囲みました。
これをみると無風時に比べてベースでは外側に大きく膨らみ、ファイナルの終点は滑走路から離れます。操縦するパイロットにとっては余裕が生まれるシチュエーションですが、従来の説明ではなかなかそこまでたどり着くことが出来ないと思います。

もう少し詳しく見てみましょう。下記の①と②を見比べて旋回半径が異なる事に気がつきますか?
この理由は対地速度の違いです。①は対地速度が大きいため旋回半径(地面に対する)が大きく、②は対地速度が小さいため旋回半径(地面に対する)が小さくなります。
実機で何十回もリラックスして飛行しているとこの現象は経験から学ぶことが出来るのですが、理論の上からは下図のように可視化する事が難しかったために、教えることは出来なかったと思っています。

もう少し風を強める(30kt)とより一層はっきりします。

旋回中、最初は大きく風に流されて、最後の滑走路に向き直るときは風の影響を受けて(対地速度が小さくなって)旋回には時間的余裕があります。


さて、これまでの紹介は正面風だけでしたが、横風は?背風は?と興味がわくと思います。
そこで典型的な8方向からの風に対する軌跡を一挙にまとめたものが下図です。タイムチェックは15秒一定です。
風速は15ktに一定にして、風向を変えたときの軌跡を描いてみました。(真ん中だけ無風です)

少しわかりにくいのですが、違いをよく見て風による傾向の違いを発見してみてください。
詳細をこのコーナーで全てを説明するのは骨が折れるため、追々解説して参りましょう。

機長を目指す方へ

上図の中で最も操縦テクニックが要求される風向きはどれでしょうか?その理由は?